2009-01-01から1年間の記事一覧

「アブストラクト・シュルレアリスム パリにおいて絵画と建築が最も接近した1925年頃、レジェやオザンファン、そしてル・コルビュジエ自身の絵画は、形や色彩が複雑で多様なものへと回帰することですでに温和なものとなり始めていた。しかしながらまさに1920…

“No Man's Land”というのはもともと戦争用語で、友軍の前線と相手の前線のあいだにできる空白地帯のことを指していたのではなかったか。第一次大戦に関する文献ではこれは頻出する。 http://en.wikipedia.org/wiki/No_Man's_Land 必ずしもこの意味で用いなけ…

下のPVを見ていて。車なしの道路とか道路なしの車は基本的に無いことを考えれば、土建産業と自動車産業は持ちつ持たれつの部分があります。こちらでも書きましたが、ニューヨークやパリのように街路を歩いて楽しいと思える(こういう都市をpedestrian cityと…

渡部英彦氏の東京女子医大日本心臓血圧研究所研究棟を拝見する。学習院の方は創立百周年記念館で、こちらは校門に位置して大学の看板的施設。業界用語でいう「エース登場」というやつか。 シビルエンジニアリングを取り入れたデザインは1960年代の建築にしば…

渡部英彦氏の学習院創立百周年記念会館(1978)を拝見する。 ファサードは校門から回り込んだところにあり、椎の大木がこの南面の日射制御用に植栽され、その影をファサードに落としているのは特徴的である。川崎清の栃木県立美術館でのアプローチやすずかけ…

小林美香『写真を〈読む〉視点』、青弓社、2005 「あたし関西系なんです」と言って、いきなり大阪弁で語り出す写真研究者の小林美香氏の著作。劈頭では写真史の論じ方がひととおり述べられ、また技術史でも表現史でも用法史でも写真家列伝でもなく、写真の見…

どちらも道路法でいう「道路」。道路の維持管理にはまぁコストが伴なうということか。 上の写真でブルーシートが掛けられているのは、崖崩れによるガードレールの滑落部分への対応。道路の右側は土砂崩れによる路肩の埋没。 下の写真はガードレールの同じく崖…

豆知識 cathexis おそらくどんな英和辞典にも載っていないと思います。 これは精神分析用語で、「備給」と和訳するとよいらしいです。 12月。

芝豆腐屋うかいでの村野藤吾研究会クロージングパーティにお誘いいただく。同会の会長で私と同郷の建築家・菊竹清訓氏と名刺交換させていただく。そもそも村野藤吾自身、同郷(だいたい)で、地元には生前の村野を知る人がまだ少なくありません。福岡県出身…

広尾交差点近くにある建築家・渡部英彦氏の事務所にお邪魔する。ランチタイムに始まり夜の9時に終わるまで、ノンストップの濃密なカンバセーション。プライベートな会話を電網与太話にするのはいかがかという考えもあるでしょうが、差障りないと思われる範囲…

“The Palestinian Question, the couple of Symptom/Fetish, Islamo-Fascism, Christo-Fascism, mieux vaut un desastre qu`un desetre” Slavoj Zizek ある方に「読め」と言われ、手渡されたスラヴォイ・ジジェクのペーパー。こちらと重なる論旨もある。今年…

井上章一 『法隆寺への精神史』 弘文堂 1994 大雑把に言って法隆寺の柱の「エンタシス」と伽藍配置を主モチーフにしながら、学説がそれぞれの時代の「精神」のなかでいかに動いていったかを見た書、といったところでしょうか。展開はしかし、cultural / inte…

京都、徳力みちたか氏(西本願寺絵所13代だそう)に版木等をいろいろ見せていただく。「伊藤若冲の現存する2枚の版木はミホ・ミュージアムに貸出中で残念ながらいま見られませんが、これはですね、角倉了以の書簡です」。 脈絡のない話になるが、「家庭教師…

井上章一 『伊勢神宮 魅惑の日本建築』 講談社 2009 どうでもいい話であるが、個人的な話をさせていただくともう23年前の夏、京都大学建築系図書室の書庫の奥にある机で一日の大半を過ごしていたころのことである。その当時売り出し中だった井上章一氏がたま…

こちらでもお名前を書かせていただいた竹中平蔵氏と名刺交換させていただく。 「ほほぅ、建築家ですかぁ」。 6月のときも“I`m so frustrated”.とおっしゃっていましたが、氏の政策は誤解されている部分があるのかもしれません。お話を窺っているとその経済思…

豆知識タイル生産量が多い国は1位が中国、続いてスペイン、ブラジル、イタリア、トルコ、ポルトガル・・・。磁器、せっ器、陶器、いずれにせよ景徳鎮などの焼物やイスラム・タイルの伝統があるからだろうか。技術的にはイタリアの釜でなければ焼けない色な…

ハル・フォスター編 『視覚論』 榑沼範久訳、平凡社ライブラリー、2007 文庫本だけあって電車のなかでも読める。ニューヨーク・ディアアートセンターでの1987年のシンポジウムでのペーパーと討議の翻訳。 全体はロザリンド・クラウスのペーパーを折返点とし…

写真家・林和美さんと写真研究家・小林美香さん のお話@gallery Nadarを拝聴する。本やCDの「ジャケ買い」という言葉がありましたが、カバーデザインやカバー写真で中身の印象まで変わるということはあるかもしれませんね。アンドレ・ケルテスやFSAなど、写…

「人々に耳を傾け彼らを理解することがなければ、建築家は自らの名声と虚栄のためにのみ建築を作るただの人になるかもしれず、彼がなさねばならないリアルな作品はできなくなってしまう。・・・建築家は職人でなければならない。もちろん扱う道具は何でもい…

ついさいきん知りました。『朝日新聞』2008年2月15日(金曜日)夕刊。 長谷川先生ありがとうございました。 ところで同書にはまたこんな記述もある。 「この点でECの政策は1970年代のアメリカの反独占法の規定をさえ超えていこうとしているように見え、そし…

「渋谷の景観変遷をめぐる諸問題」という「渋谷学研究発表」を拝聴。 一つ目は遠藤潤氏による「近世から近代における渋谷川・古川流域の信仰史試論」という発表で、大雑把に述べさせていただくと、渋谷川流域の寺社配置の歴史的変遷を水との関係で見ていく、…

暑い日が続きますが、皆様におかれましてはご清栄のことと拝察します。 手塚貴晴・由比さんからオープンハウスのお誘いをいただき、新作である横浜市の大倉山アソカ幼稚園を拝見しました。 お二人のお人柄が反映されたかのような素直で爽やかな建築でした。 …

時は永遠の影である。 プロティノス

「西田哲学演習(昭和36-37年)」 西谷啓治著作集第14巻 創文社 1990 よくわかる西田哲学といった感じだろうか。「働くものから見るものへ」、「左右田博士に答ふ」、「場所」の三章からなる構成である。西田幾多郎の初期の著作『善の研究』でも感じられるこ…

「自然について」 西谷啓治著作集第14巻 創文社 1990 近代思想ではたとえばジャン・ジャック・ルソーの「自然」概念とエドマンド・バークの「自然」概念は対照的に使われているのではないかとさえ思えるのだが、いくつか抜書き。 「その反動としてルソーが出…

アンドリュー・リーチのいるクイーンズランド大学でディレクターを努めているジョン・マッカーサー(John Macarthur)というのは、たしかむかし『アッサンブラージュ(Assembalage The MIT Press)』誌でピクチャレスク論を書いていて、それがまたマーク・ウィグ…

晩年の『ベネチアとそのルネサンス(Venezia e il rinascimento)』はタフーリの著作で最も内的に複雑であったと、リーチは述べる。タフーリ自身の言葉によれば「あらゆる規範的歴史に反対する」という野心的な著作であり、また「ヒストリオグラフィー批評の手…

「これらの諸論文はコーリン・ロウとマンフレッド・タフーリのあいだに一つの位置を占めようという試みであるとも議論できるかもしれない。彼らのあいだに隔たりがあるのは疑いないことだが、私の仕事はタフーリの歴史性から隔たった文脈に、時代精神に対す…

そんなタフーリに「計画としての歴史」という論文があるという。アンドリュー・リーチのマンフレッド・タフーリ論第二部最終章(実質的な最終章)のタイトルは「計画の独自性(The Solitude of the Project)」と名づけられ、ここで著者はドイツの美術史家ボ…