渡部英彦氏の学習院創立百周年記念会館(1978)を拝見する。



ファサードは校門から回り込んだところにあり、椎の大木がこの南面の日射制御用に植栽され、その影をファサードに落としているのは特徴的である。川崎清栃木県立美術館でのアプローチやすずかけの扱いが思い出される。
躯体は現場打ちコンクリート、外皮はPCコンクリートで造られているが、ルイ・カーンの建築をはじめ、この構法はこの時代の建築にしばしば見られる。マリオンとルーバーを兼ねたPC部材の構成が独特の表情を与える。



入口を入っての受付。堅木によるカウンター甲板の断面が特徴的。入口から90度まわって見えるホワイエはゆるく2段持ち上げられ、またプロセニアウムのように切り取られることで劇場への期待感を持たされる。ホワイエとの相違を強調するため、天井高は低く抑えられている。レッドカーペット。天井はそれに対応するようにうすい赤紫。



ホワイエ。鈍角、ニッチ、スリット、ギャラリー、バルコニーによる構成。鈍角はまた階上の小ホールの輪郭をそのままモチーフとして用いたもので、この部分に人溜りが出来易くするもの。



階段室ピクチュアウィンドウ。



2階ラウンジ。いわずと知れたイームズ・シェルチェア。



2階ギャラリー形式のホワイエ。鈍角フォールディング。



ホワイエ見下ろし。WCH(double ceiling height)。



階段室。平面形は鋭角を用いている。アルバーロ・シザのポルト大学建築学部を思い出す。手摺笠木は視覚的な締めだけでなく堅木SOP塗装とすることで、同じ白でもコンクリート部分と微妙に質感が異なるものとなっている。そこからデタッチして同じく堅木UC塗装の45φハンドレールが木の質感を与える。



ファサードを南面させそこにスリットをとることで、日中は自然光が日時計のように動いていく。