渡部英彦氏の東京女子医大日本心臓血圧研究所研究棟を拝見する。学習院の方は創立百周年記念館で、こちらは校門に位置して大学の看板的施設。業界用語でいう「エース登場」というやつか。



シビルエンジニアリングを取り入れたデザインは1960年代の建築にしばしば見られるが、実際に目の前にすると迫力がある。以前お聞きしたお話では本体を空中に浮かすのに片側2点ピン接合、反対側をローラーによる伸縮吸収機構という不静定構造で当初計画していたが、結局静定構造にしたということだったように思う。その結構点をぎりぎりにまでよせ、そこからテーパーをかけているので緊張感がある。この構造で得られた地上部分はエントランスおよび駐車スペースとして使われている。



「橋脚」部分。エアコン室外機はもちろん後に付けられたのだろう。よりによってこんなところに付けなくてもと思うのだが、それを差し引いても見応えがある。



長軸方向から見る。力学的かつ記念的な現場打コンクリートの扱い。



下に入って見る。ガーダー(大梁)部分はRC打放しで他は目地をとって吹付けタイル仕上げ。ガーダーのハンチはアールをとってそれをデザインにしている。これはテーパーの微妙な角度と相俟ってよく効いている。



エントランス部分。中に入ることはできなかったが階段のデザインは見える。サッシやドアは竣工時のものがそのまま使われていた。当時としてはまだ珍しかったであろうアルミのサッシだが、その後に規格化されていったものに比べると、見付寸法やプロポーションが格段にいい。



後ろにまわったところ。逆光で空中のボリューム感が把握できる。ジャン・プルーヴェを彷彿させるキレのあるデザイン。うまい。



地下パーキングへの入口。自動車の回転半径をそのままデザインに用い、RCの洗い出し仕上げで重量感を強調。