夕方からお打ち合わせ。むかしやっていた設計法では、敷地の与条件を調べ上げ、リクエストと必要プログラムを加味し、まずは10案くらい作ってクライアントさんに見てもらい、それでいけるようなら基本設計をまとめ、実施設計に向かってディテールをつめていくといった感じでした。もう少し詳しく言えば、主要素のマトリックスを作成し、その順列組合せや条件操作によってまずは考えられる10案をざっとたたき出して検討するという感じです。なぜ10案かといえば、きりのいい数字ということもあれば、条件操作ででてくるのがだいたいそれくらいということもあるし、可能性を片っ端から検討して検討漏れがないようにと考えると10案くらいということもあります。あらゆる可能性を検討したうえでそのなかから2-3案を建築的に練れた案として提示し、ほかを参考案をしてお見せするという趣旨の設計法でもあります。もっとも、推薦案を気に入ってもらえるとは限らず、参考案の方にクライアントさんのお目が行ってしまうこともあり得ます。いずれにせよこの方法による案はしかし最近、深みに欠けることが多いような気がしてきています。10案検討しなくてもある程度予測できるようになったということもあるのかもしれませんが、敷地に何度か足を運び、時間をかけ、打ち合わせを重ねる過程で見えてくるものもあろうというものです。そうした方が案としての深みを増すような気がしています、と書いてきてhutterと思いつくことがありました。チャールズ・サンダース・パースのディダクション(deduction/演繹)、インダクション(induction/帰納)、アブダクション(abduction)という三つの命題形です。
かつての方法はどちらかというと演繹的だったのですね。abductiveの方は論理学では仮定推論的と和訳されているようです。ついでにいえば組織設計事務所やゼネコン設計部の設計法もどちらかといえば演繹的だろうと思います。経済原則がおおきく作用するので、それも仕方のないことでしょう。もしかしたらブランドとして確立した有名事務所もそうなのかもしれません。
ところで設計や打ち合わせに用いるツールの定番物としての図面ですが、この10年ですっかりCADが手描き図面にとって替わった感があります。いっぽうでCGが模型にとって替わったかというと必ずしもそうとは思えません。模型が三次元の立体であるのに対し、CGはあくまで「絵」だからだと思います。人間の視野に近い範囲を描写しようとするとどうしても設定カメラの画角が大きくなってしまい、透視図法で計算しているために画面のディストーションが大きくなってしまうというもどかしさがあるのです。実際には描く対象や内容によってそのつど画角を調整することになります。
またCGの静止画で物足りないときは、同じデータを使ってウォークスルーのアニメーションを制作し、それを動画編集用のソフトに取り込んで音響素材と一緒に加工編集し、短いムービーを作ったりもします。
この最後のものはときとして「設計者の自己満足だ」などと非難されることもあります。











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